先に結論|結婚しただけで税金は増えない
日本では、結婚したこと自体に対して「結婚税」のような新しい税金がかかるわけではありません。
所得税も住民税も、基本的には夫婦それぞれについて計算されます。
結婚後に税金や手取りが変わったように感じるのは、主に次のような事情が動くからです。
- 配偶者控除・配偶者特別控除の対象になった
- 社会保険の扶養に入った、または外れた
- 働き方や収入が変わった
- 年末調整で家族情報を変更した
- 住民税が前年所得をもとに翌年度変わった
夫婦の収入を合算して所得税率を決めるわけではない
日本の所得税は原則として個人単位です。
たとえば年収500万円の人と年収300万円の人が結婚したからといって、「世帯年収800万円」として一つの所得税率を掛ける仕組みではありません。
それぞれの所得に対して税額を計算し、そのうえで要件を満たせば配偶者控除などが関係します。
「結婚したら手取りが増える」とも限らない
配偶者控除を受けられれば、控除を受ける側の所得税などが軽くなる可能性があります。
一方で、配偶者が勤務先の社会保険に加入することになれば、健康保険料や厚生年金保険料を負担するため、短期的には手取りが下がる場合があります。
ですから、税金だけ見て「得・損」を決めないことが大切です。
結婚後は「所得税・住民税・社会保険」を分けて考える
結婚後のお金が分かりにくくなる大きな理由が、この3つをまとめて「税金」と考えてしまうことです。
所得税はその年の所得をもとに精算する
会社員の場合、毎月の給与から所得税が源泉徴収され、年末調整でその年の税額を精算するのが基本です。
結婚して配偶者控除や配偶者特別控除を受ける場合も、年末調整が重要になります。
住民税は変化が翌年度に見えやすい
住民税は前年の所得をもとに計算されるため、結婚や転職で今年の状況が変わっても、すぐに税額へ反映されるとは限りません。
「結婚したのに住民税が変わらない」と焦らなくて大丈夫です。
また、住民税の非課税基準などは自治体や家族構成によって異なるため、お住まいの市区町村で確認してください。
社会保険は税金ではない
健康保険料や厚生年金保険料は税金ではありません。
所得税の配偶者控除を受けられる状態でも、勤務条件によっては配偶者本人が社会保険へ加入することがあります。
「税の扶養に入っているから、社会保険も扶養」とは限らないことを覚えておいてください。
2026年分の配偶者控除・配偶者特別控除はいくらまで?
ここは2026年の税制改正を反映して確認する必要があります。
国税庁では、2026年分の所得税について、給与収入のみの場合、年間給与収入136万円以下が配偶者控除を受ける配偶者側の一つの目安とされています。
2025年分は123万円以下だったため、以前の記事や古い解説とは数字が違います。
国税庁|配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか
配偶者控除|給与だけなら136万円以下が目安
2026年分は、配偶者の合計所得金額が62万円以下であることが要件の一つです。
給与収入だけの場合、給与所得控除74万円を差し引くため、
給与収入136万円 − 給与所得控除74万円 = 所得62万円
となり、136万円以下が一つの目安になります。
ただし、控除を受ける本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合、配偶者控除は受けられません。
配偶者控除はいくら?
一般の控除対象配偶者の場合、控除を受ける本人の合計所得に応じて次のように変わります。
なお「38万円控除される=税金が38万円戻る」という意味ではありません。
所得から38万円を差し引いて税額を計算する仕組みです。
給与収入169万円以下まで38万円の控除が続くケースもある
配偶者の給与収入が136万円を超えると、配偶者控除ではなく配偶者特別控除を検討します。
控除を受ける本人の合計所得金額が900万円以下の場合、配偶者の合計所得が95万円以下なら配偶者特別控除は38万円です。
給与だけであれば、2026年分は給与所得控除74万円を加えて、給与収入169万円以下が一つの目安になります。
つまり、136万円を少し超えた瞬間に38万円の所得控除がゼロになるわけではありません。
配偶者特別控除は給与収入約207万円まで段階的に残る
2026年分の配偶者特別控除は、配偶者の合計所得金額が62万円超133万円以下であることが対象条件の一つです。
給与のみで給与所得控除74万円を前提にすると、給与収入ではおおむね207万円以下までが対象範囲になります。
ただし、控除額は配偶者の所得が増えるにつれて段階的に小さくなります。
2026年の「年収の壁」を整理|178万円・106万円・130万円
「年収の壁」は一つではありません。
しかも、所得税の壁と社会保険の壁では意味が違います。
178万円|本人の所得税がかからない一つの目安
2026年分は、給与収入だけで他に所得がない場合、給与収入178万円以下なら所得税がかからないと国税庁が案内しています。
これは給与所得控除74万円と基礎控除104万円を合わせた金額です。
106万円の壁|2026年10月に賃金要件が撤廃予定
これまで「106万円の壁」と呼ばれてきたのは、従業員50人超の企業などで働く短時間労働者について、週20時間以上などの条件に加えて、所定内賃金月額8万8,000円以上という要件があったためです。
厚生労働省は、この月額8万8,000円以上という賃金要件を2026年10月に撤廃予定と案内しています。
撤廃後は、対象となる事業所では「年収106万円を超えたか」よりも、週20時間以上働くかなど、働き方そのものを確認することが重要になります。
なお、企業規模要件も今後段階的に縮小・撤廃される予定ですが、一度にすべての企業が同じ扱いになるわけではありません。
130万円の壁|2026年4月から扶養認定方法にも変更
130万円は、健康保険の被扶養者や国民年金第3号被保険者の認定で重要になる基準です。
2026年4月1日からは、一定の条件を満たす場合、労働条件通知書などに書かれた賃金から見込まれる年間収入が130万円未満であり、他の収入が見込まれないことなどをもとに、原則として被扶養者認定を行う取扱いが始まっています。
つまり、単純に「前年に130万円を超えたか」だけを見るのではなく、現在の労働契約から見込まれる年間収入も重要になっています。
「壁を超えたら損」とだけ考えない
社会保険へ加入すれば、給与から保険料が引かれるため、短期的には手取りが減ることがあります。
一方で厚生年金の加入期間が増える、傷病手当金などの保障が関係するなど、得られる保障も変わります。
働き方を「壁の直前で止めるか」「社会保険へ加入してさらに働くか」は、税額だけでなく将来の働き方まで含めて考えてください。
結婚した年の年末調整でやること
会社員の場合、結婚後の税金手続きでまず確認したいのが勤務先の年末調整です。
結婚したら勤務先へ家族情報の変更を伝える
姓、住所、扶養関係などが変わった場合は、人事・総務へ確認します。
社会保険の扶養に入れる場合は、年末調整とは別に健康保険などの手続きが必要になることもあります。
2026年分の配偶者控除等申告書を確認する
国税庁は2026年分について、
「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼給与所得者の特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書」
を案内しています。
名前は長いですが、配偶者控除・配偶者特別控除を受ける場合には、配偶者の所得見積額などを記載する書類だと考えると分かりやすいです。
配偶者の収入は「見込み」を確認する
パート勤務などでは、年末調整の時点で12月分の給与が確定していないことがあります。
毎月の給与だけでなく、賞与、残業、副業なども含め、その年の所得見込みを確認してください。
見込みと実績が変わった場合は、勤務先で再調整できるケースや、確定申告で修正するケースがあります。
年末調整で漏れても、確定申告で対応できる場合がある
配偶者控除を申告し忘れた、医療費控除を受けたい、住宅ローン控除の初年度に該当するなど、会社の年末調整だけでは完結しないケースもあります。
「年末調整に間に合わなかった=もう控除を受けられない」とは限りません。
必要に応じて税務署や国税庁の確定申告案内を確認しましょう。
税の扶養と社会保険の扶養は何が違う?
「夫の扶養に入る」という言い方をよくしますが、実際には二つの話が混ざっています。
税の扶養に入っていても社会保険へ加入することはある
たとえば配偶者特別控除の対象になる収入でも、勤務先の社会保険加入条件を満たせば、自分の勤務先で健康保険・厚生年金へ加入する場合があります。
逆に、社会保険上は被扶養者でも、所得状況によって配偶者控除の金額が変わるケースもあります。
扶養内で働くかは「税額」だけで決めない
扶養内で働くことで目先の社会保険料負担を抑えられるケースはあります。
ただし、働く時間を増やしたい、収入を伸ばしたい、キャリアを継続したいという希望があるなら、壁だけを理由に仕事を抑える必要があるのかも夫婦で考えてみてください。
結婚祝い・親からの援助に贈与税はかかる?
結婚すると、ご祝儀や親からの援助など、普段より大きなお金が動くことがあります。
ここでは「一般的なお祝い」と「まとまった資金援助」を分けて考えることが大切です。
一般的な結婚祝い・ご祝儀は通常の範囲なら非課税
国税庁は、個人から受ける祝物などについて、贈与者との関係などから社会通念上相当と認められるものは贈与税がかからないとしています。
一般的な結婚祝い・ご祝儀を受け取るたびに110万円の基礎控除と照らして申告する、という単純な話ではありません。
親からまとまった結婚資金をもらう場合は別に考える
親や祖父母から結婚式、新居、生活準備などのために大きな金額をまとめて受け取る場合は、通常のご祝儀とは分けて考えます。
扶養義務者から生活費などを受け取る場合でも、非課税になるのは一般に「通常必要な範囲の金額を必要な都度受け取り、実際に生活費などへ使う」ケースです。
生活費として受け取ったお金をそのまま貯金したり、株式・不動産購入へ回したりする場合は同じ扱いになるとは限りません。
結婚・子育て資金の一括贈与には特例がある
父母・祖父母など直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受ける場合、一定の要件を満たせば1,000万円まで非課税となる制度があります。
このうち、結婚に際して支払う費用は300万円が限度です。
制度は2027年3月31日までが対象期間とされており、受贈者の年齢や所得などの条件があります。
また、単に親から銀行口座へ振り込んでもらえば自動的に非課税になる制度ではありません。金融機関との結婚・子育て資金管理契約や申告手続きが必要です。
親から住宅購入資金をもらう場合
結婚を機に住宅を購入し、父母・祖父母などから資金援助を受ける場合は、住宅取得等資金の贈与税非課税制度が使える可能性があります。
2026年12月31日までの贈与について、一定要件を満たす場合、受贈者ごとに、
- 省エネ等住宅:1,000万円まで
- それ以外の住宅:500万円まで
の非課税枠があります。
住宅は資金負担と登記持分、住宅ローンなどが絡むため、具体的な契約前に税理士・金融機関・司法書士などへ確認することをおすすめします。
夫婦の共通口座を作っただけで贈与税になるわけではない
結婚後、共通口座を作って家賃や食費などを出し合う家庭も多いですよね。
通常必要な生活費を夫婦で負担するためにお金を移すこと自体を、すぐ「贈与税がかかる」と心配する必要はありません。
注意したいのは、一方が出した多額のお金をもう一方名義で長期間貯蓄したり、投資・不動産購入などの資産形成へ使ったりするケースです。
夫婦の共通口座や貯蓄ルールについては、結婚後のお金の管理と夫婦の家計ルールで詳しく整理しています。
医療費控除・ふるさと納税は夫婦でどう考える?
共働き夫婦では、「どちらで控除を受けると得?」という疑問も出てきます。
ただし、好きなほうへ自由に付け替えられる制度ではありません。
医療費控除は「実際に支払った人」が申告する
生計を一にする夫婦の場合、一方が相手の医療費を実際に支払ったなら、支払った人の医療費控除の対象にできます。
たとえば夫が妻の医療費を負担した場合、生計を一にしていれば夫の医療費控除の対象になります。
「年収が高い人のほうが得そうだから、後からそちらへ全部付ける」という考え方ではありません。
医療費控除では通常10万円を差し引きますが、総所得金額等が200万円未満の場合は総所得金額等の5%が基準になります。
そのため「所得が高い側が必ず有利」とも言い切れません。
ふるさと納税は夫婦それぞれ自分名義で確認する
ふるさと納税も夫婦合算で一つの上限になるわけではありません。
夫婦それぞれについて、本人の所得や住民税などをもとに上限目安を確認し、控除を受ける本人名義で寄附するのが基本です。
NISA・貯蓄・夫婦の資産形成については税金記事で広げすぎず、結婚後のお金管理の記事で詳しく紹介しています。
高見真紀が成婚前に話してほしい「お金と働き方」のこと
税金の制度そのものは、国税庁や勤務先、専門家へ確認するのが一番正確です。
一方、婚活カウンセラーとして私が大切にしているのは、制度を調べる前提になる二人の希望を、成婚前から言葉にしておくことです。
ENSHAREでは真剣交際へ進む前後に、仕事、住まい、家計、家族との関わり、子どもについての希望など、将来に関係するテーマを段階的に確認しています。
1.結婚後も今の働き方を続けたいか
「結婚したら妻は扶養へ」という前提から入らないこと。
どちらもフルタイムを続けたいのか、勤務時間を減らしたいのか、転職や育休を考えているのか。
まず希望を聞き合います。
2.家計は誰が何を負担するか
税金の控除額より先に、家賃、食費、貯蓄、自由に使うお金をどうするかを整理しておくと、結婚後のストレスが減ります。
収入差がある夫婦なら完全折半だけが正解ではありません。
3.子どもができた時の働き方
今は共働きでも、出産・育児によって一時的に収入が変わる可能性があります。
「その時になったら考える」でも構いませんが、少なくともお互いがどんな働き方を希望しているかは知っておくと安心です。
4.親から援助を受ける可能性があるか
結婚式、新居、住宅購入で親から援助の申し出がある家庭もあります。
大きなお金ほど、二人だけで「たぶん大丈夫」と判断せず、税務上の扱いを確認してから受け取ることをおすすめします。
真剣交際中に何を話しておけばいいか迷っている方は、真剣交際で話しておきたいことリストも参考にしてください。
成婚後の入籍・名義変更・新生活までの全体の流れは、結婚相談所の成婚後にやることで整理しています。
大阪で利用できる結婚新生活支援などを確認したい方は、大阪で結婚するともらえるお金・助成金をご覧ください。
結婚した年の税金・扶養チェックリスト
制度を全部覚える必要はありません。
結婚したら、次の順番で確認すれば整理しやすいです。
結婚後の税金についてよくある質問
まとめ|結婚後の税金は「扶養」という言葉だけで判断しない
結婚しただけで新しい税金が発生するわけではありません。
結婚後に確認したいのは、主に配偶者控除・配偶者特別控除、社会保険の扶養、年末調整です。
2026年分では、給与収入のみの場合、
- 136万円:配偶者控除の目安
- 169万円:一定条件で配偶者特別控除38万円が維持される目安
- 178万円:本人の所得税がかからない一つの目安
- 約106万円:社会保険の賃金要件は2026年10月撤廃予定
- 130万円:社会保険の被扶養者認定で重要な基準
と、それぞれ意味が違います。
「○万円を超えたら損」と一つの数字だけで決めず、何の制度の基準なのかを確認してください。
そして、婚活中・真剣交際中の方には、税金の話をする前に「結婚後にどう働きたいか」「二人でどんな家計にしたいか」を話してほしいと思っています。
制度は、その暮らしを実現するために確認するものです。


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